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就職支援を目的とした部署が「就職するな」とも読める文章を掲載しているのには理由がある。
学内の教員は、いまだに大学院進学者より就職者を下に見ている。
あるいは、就職支援を大学の業務とすることに否定的である。
だからこそ、東大初の就職担当部署は「就職課」でもなく「キャリアセンター」でもない、「キャリアサポート室」なのである。
この名称なら、就職支援だけでなく大学院進学を含めた進路支援をする部署、と言い訳することが可能だからだ。
就職支援そのものには積極的な私立大でも、「なぜ就職に振り回されるのか」という思いは強い。
ある私立大の就職課長はつぎのように憤る。
「バブル経済期まで、就職活動の時期は4年生の夏休みか、それより少し前にスタートしていました。
それが早期化に次ぐ早期化、長期化に次ぐ長期化で、3年生の秋には始筑波大(茨城県)開学当初から国立大では珍しく就職課を設置。
それを長年、他の国立大が見習わなかったのはどういうことか。
まっています。
インターンシップやキャリア教育なども含めれば、1年生からスタートしていると言ってもいいでしょう。
学生は入学と同時に就活に振り回されています。
そのせいで、講義やゼミ、実習がきちんと受けられない事態もあちこちで発生しています。
これは教育権の侵害もいいところです。
企業や就職情報会社は反省するどころか、さらに早期化、さらに長期化を進めている。
大学としては本当にいい迷惑です」それでも、大学は就職支援に力を入れなければ受験生か集まらない。
受験生か集まらなければ、大学の存続は難しい。
これは、本来は安泰だったはずの国立大・公立大でも事情は同じだ。
かくて、どの大学でも就職支援に力を入れるようになる。
結果として、就活の早期化・長期化に手を貸すことになる。
そのことを大学関係者はわかっている。
でも、止められずジレンマに陥ることになる。
徹底支援、熱血支援と言うけれど……「うちの大学はこれほど熱心ですよ」と、受験生集めのために、どの大学も就職支援策外国語学部を中心に、キャビンアテンダントなど航空独協大(埼玉県)業界への就職は抜群。
客室乗務員誦座なども古くから実施。
を強調する。
しかし、そのわりに、熱の入れ方は差が激しい。
熱心・不熱心さの目安の一つは、就職課(キャリアセンター)のオープン時間である。
総学生数に対して職員数が十分である大学は、オープン時間は長くなる。
不熱心な大学だと職員がそもそもあまりいない。
その職員もやる気がないから、「仕事が増えるのはご免」とばかりにオープン時間は短くなる。
地方の単科大では、平日でさえもオープンする曜日とクローズになる曜日がある。
それでいて、「徹底した就職指導」と宣伝しているのは羊頭狗肉、サギもいいところだ。
ま、地方の単科大は職員数を増やしたくても増やせないから仕方ないとも言える。
それでも、就活時での不利は否定できないが。
地方の単科大と違い、職員数を十分に確保できるはずの大都市圏・総合人もピンキリである。
私か最近訪問した関東のX大は、ホームページや大学パンフレットで就職支援のことをこう宣伝している。
「徹底した個別相談と細かい支援で『就職のX』の実績を挙げています」我が子の就職が気になる親にしてみれば、実にグッとくるキャッチフレーズである。
では、この大学の就職課のオープン時間はどうなっているのか。
東京大(東京都)卒業生との交流会「知の創造的摩擦プロジェクト」を2005年から開催。
いろいろと話を聞ける好機も、参加は数百人程度。
平日…………10時~17時(ただし1111時半から14時半までは昼休みにつき閉室)土曜…………10時~12時日曜・祝日…閉室5学部・学生総数5000人を抱える総合大で、昼休みの3時間をはじめ、閉室時間の長さはひどいのではないだろうか。
それとも、その昼休みの間に就職支援のための英気を養っているとでも言いたいのか。
当の学生にしてみれば、「そんな暇があるなら、就職課のオープン時間をもっと長くしてくれ」と文句の一つも言いたいに違いない。
念のため、受験生に紛れてオープンキャンパス(大学説明会)に参加、就職課職員による就職支援の説明プログラムがあったので出席してみた。
オープンキャンパスの入場口でやたら明るい学生スタッフが渡してくれたパンフレットには、「就職課熱血職員が『就職のX』の理由を語ります」とある。
自分で熱血と言うからにはさぞすごいのだろう、と期待して参加すると、どう好意的東京工業大(東京都)卒業者ベースの就職率はわずか10~20%a残りはほぼ全員が院に進学、院卒就職率は最強の国立理工系大。
に見ても熱血とは言いがたい、疲れ果てた中年男性が来た。
我が子の進学に悩む保護者に違いない、最近では保護者のオープンキャンパス参加も増えているのだから、と考えていると、なんとこの中年男性が就職課職員であり、就職支援を説明する講師役だという。
熱血職員であるはずの同氏は、熱血とも冷血ともほど遠いぼそぼそ声で就職事情の説明を始めた。
「え、大学の役目とは高等教育機関でありまして……」わずか30分しかないプログラムでいきなり大学とは何かを説明し始めた。
付言すると、大学教育に関する学会でも大学全体の概要説明でもない、就職支援に関する説明プログラムである。
その後も、大学教育の意義説明は止まらない。
この職員が熱血かどうかは価値観もさまざまなのでまだ我慢しよう。
しかし、「X大の就職支援」の話をほとんどしないのはどういう了見か。
「ちょっと時問も押していますので、詳しい説明はパンフレットを読んでください」というすばらしい文句が出てきたのは終了5分前である。
この時点で、プログラムに参加していた受験生・保護者、それから私も、ほぼ全員がぶち切れている。
こんなくだ東京学芸大(東京都)教員養成の専門大学。
就職資料は教員採用関連が多い。
就職相談員として教育委員会出身者が来ることも。
らない話を聞かされるのであれば、参加しないほうがまだましだったからだ。
自称・熱血職員の迷演説はまだ続く。
「この間、金融業界についての質問をもらいました。
ご説明しますと、うちは金融業界への就職者数も多いです。
よく、就職実績の良し悪しを判断する目安は金融業界への就職者数、なんて言われていますが、その点、うちは多いほうだと自負しています」多いというわりに、パンフレットには就職者数が公表されていない。
ということは、大して多くないのである。
『今日の講師の方は代役か何かか』と学生スタッフに終了後、聞いてみた。
すると、「いえ、就職課の職員です。
パンフレットの『熱血』は言いすぎかもしれませんが、でも熱心な方ですよことのこと。
おいおい、言いすぎにもほどがあるだろう、と学生スタッフを責めるほど私はひどい人間ではない。
とはいえ、このr熱血職員」に徹底指導される学生が就活でどこまで勝負できるか、と考えると同情を禁じえなかった。
「船」と「魚」が統合してできた国立の「海」専門大。
水産・食品一物流など、海に関する業界では就職が相当強い。
この自称・熱血職員のように、就職課職員であるのに、やる気のなさを体現した職員が存在するのも大学の不思議なところである。
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